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頭痛以外にもたくさんある天気痛の症状
急激に気圧や気温が低下すると、わたしたちの内耳にあるセンサーが反応し、自律神経が乱れことから、体調不良が発生します。
これが、愛知医科大学の佐藤医師が突き止めた、気象病のメカニズムです。
気象病によって起こる痛みなどの諸症状は、天気痛と呼ばれています。
代表的なのは頭痛ですが、ほかにも持病の悪化や、すでに治っている部位に痛みが発生するなど、さまざまな症状が起こるんです。
ここでは、個別の症状を詳しく解説してゆきます。
片頭痛
一口に頭痛と言っても、いろんなタイプがあります。
・緊張型頭痛・・・頭が締め付けられる痛みが発生するのが特徴で、血行不良が原因で発生します
・群発頭痛・・・目の奥や、頭の片側だけ痛むのが特徴で、1~2か月間集中して発生します
・片頭痛(偏頭痛)・・・脳の血管が急激に拡張することによって、脈を打っているようなズキズキした痛みが発生します
天気痛によって発生する頻度が高いのは、3番目の片頭痛です。
交感神経が興奮状態になると、脳の血管が拡張するとともに、痛みを発生させる物資が分泌されるのです。
さらに、血管の拡張が促されるので、耐えがたいほどの頭痛が頭部全体に広がってゆきます。
片頭痛の発生は、三叉神経(顔面にある知覚神経)も影響していると考えられていますが、その因果関係はまだ研究途上にあります。
女性の場合は、生理時期にこの天気痛が重なると、ホルモンの影響で症状がひどくなる傾向にあるようですね。
首の痛み
首にはだいじな交感神経が通っているため、気温や気圧の低下で自律神経のはたらきが乱れると、痛みが発生しやすです。
首は6~8キロもある頭を支えつつ、上下に動かしたり、回したりと、さまざまな動きによって日頃から負担がかかっている部位ですので、筋力が低下すると疲労が蓄積されやすくなり、痛みも強くなります。
また、現代人はスマートフォンなどの利用時間が多いため、首を前に突き出した姿勢を続けることも多いですよね。
これによって、ストレートネックという症状が引き起こされ、首や肩の血行が悪化。
天候の悪化とあいまって、激痛が発生しやすくなります。
気管支ぜんそく
アレルギーによって引き起こされる炎症が続くと、気管支がどんどん狭くなってゆきます。
これが、気管支喘息です。
昔は、小さいお子さんに多い病気でしたが、ここ30年間で大人の発症率が3倍にも増えています。
ほとんどのケースが、原因となるアレルギーを特定できず、炎症を抑えないと発作が慢性化します。
気象病研究の第一人者である佐藤医師は、気管支ぜんそくの発作も気圧が影響していて、自律神経が乱れることで症状が出ると指摘しています。

リウマチ
関節に炎症が発生してリウマチに罹ると、軟骨などが破壊されて、関節を動かせなくなることもあります。
さらに、症状は全身に広がってゆき、手首やひざ、股関節などに強烈な痛みや熱などを発生させます。
そして、重篤な状態になると、関節が固まってまったく動かせなくなることもあるという、恐ろしい病気なんです。
リウマチは免疫の異常によって関節に炎症が起こる病気です。原因として考えられるのは、ウイルス感染などをきっかけとした免疫反応の仕組みの乱れです。
最近の研究によれば、リウマチの症状は、特に3日前の気圧の状態に左右されることが分かっています。
この病気を抱えている方は、毎日気圧の変化をチェックして、体調に注意することが良いといえます。
めまい
最初にお話しした、天候の悪化による内耳の反応は、リンパ液の動きによって「カラダがバランスを崩している」という信号に変わります。
実際には、カラダはまっすぐの状態を保っていますので、この間違った情報が脳に伝わると混乱して、平衡感覚が崩れてめまいを発生させるのです。
めまいにもいくつか種類があるのですが、一番しんどい症状がでるのが、リンパ液が過剰な状態になることで起こるメニエール病です。
リンパ液の量が多くなると、リンパ水腫という状態が発生するのですが、その原因はまだ分かっていません。
メニエール病は、難病指定を受けている病気で、現時点では完治させる方法がありません。
リウマチ対策と同じように、気圧や気温の変化をこまめにチェックするようにして、天候が悪化する前に気圧の影響を受けないよう、耳栓で耳の入り口を防ぐのも有効です。
また、気象病による天気痛が引き起こすめまいの症状は、乗り物酔いのメカニズムと似ていますので、酔い止め薬を飲むという方法もあります。
でも、薬を常用していると、副作用の影響が大きくなりますし、薬の効き目が次第に弱くなるというデメリットもあることを覚えておいてください。
耳栓と合わせて、後ほどご紹介する“ツボ療法”もおススメですよ!
古傷の痛み
昔、骨折をしたところや、ねんざした足首などが、天候が悪化すると痛んでくるということがあります。
こうした症状も、気象病による天気痛の影響です。
内耳の誤動作によって興奮した交感神経は、痛覚神経を刺激して全身に痛みを発生させます。
この痛覚神経は、古傷の周辺にもたくさん存在するため、治ったはずの部位が痛むということが起きるんです。
昔から、
「古傷が痛むから、雨が降る」
などと、迷信、都市伝説のように言われてきましたが、近年の気象病の研究によって、きちんと因果関係があると分ったんです。
天気が悪くなるたびに、痛みがひどくなるとお悩みの方は、普段から自律神経が乱れにくい生活を心がけてください。
主なポイントを、下記に挙げておきます。
1.朝起きたら日光浴を行ない、体内時計をリセットする
睡眠のリズムが乱れた状態が続くと、自律神経が失調します。
自律神経を正常に保つは、アクセルとなる交感神経と、そのブレーキ役である副交感神経がバランスよく働く必要があるので、その乱れを整えるために、起床後すぐに太陽光を浴びるようにしてください。そうすれば、副交感神経が優位の状態から交感神経優位に切り替わって、一日が快適にすごせるようになってきます。
太陽の光には、リラックスホルモンである「セロトニン」を、体内で生成する作用もありますので、睡眠不足でつらい朝も日光浴を行なってくださいね。
こうした習慣を継続することによって、夜はいつも決まった時間に眠気が発生するようになりますよ。
2.運動とストレス発散の習慣を身に付ける
運動不足が続き、ストレスが過剰な状態になると、布団に入ってもなかなか寝付けないようになって、眠りも浅くなりがちです。
そうなると、脳にどんどん疲労が蓄積してゆきますから、副交感神経のはたらきが弱まって、交感神経が“暴走”しやすくなるんです。
仕事や家事に追われて、なかなか時間が取れないという方でも、ラジオ体操をするだけで、ストレス発散につながる運動ができますよ。
朝の時間帯に余裕がある方は、起床後にウォーキングするのがおススメですよ。
3.光の刺激は最低限に
夜間に明るい照明が点いた環境で生活していると、脳がどんどん活性化してゆきます。
こうしたカラダの特性を考えて、夕方を過ぎたら心身をリラックスさせる副交感神経をはたらかせるためにも、灯りを暗くすることも大切です。
照明がカラダに直接当たらない間接照明などを取り入れるようにすると、交感神経が次第におだやかになってゆきますよ。
また、お風呂でリラックスする時も、浴室の照明は消して、脱衣所の灯りを点けるだけにしてみてください。
最初は、違和感をおぼえるかもしれませんが、すぐにカラダが慣れて、心がどんどん安らいでゆきます。
こうした光の工夫は、片頭痛を抑えるのにも効果的です!
4.寝る前にスマートフォンの操作をしない
スマートフォンの画面から出るブルーライトは、脳を覚醒状態に導きます。
さらに、情報を探すという行為も、脳を興奮させますので、寝つきが悪くなるだけでなく、自律神経が乱れて天気の影響を受けやすくなるんです。
無意識のうちに、スマートフォンを操作していることが多い方は、布団から離れた場所にスマートフォンを置くようにしてください。

耳の違和感
飛行機に乗った時や、電車でトンネルに入った時など、耳に痛みを感じることがありますよね?
これは気圧の変化によって引き起こされる症状で、天気痛によっても同様の痛みや圧迫感が発生します。
耳の違和感対策としてもおススメなのが、さきほどもお話しした耳栓です。
耳の形状に合わせてやさしくフィットする耳栓を見つけて、天候が悪く前から装着するようにすると、症状緩和につながりますよ。
うつ病
天気痛によって交感神経が興奮状態に陥ると、副交感神経との切り替わりが鈍くなります。
そして、気分がいつも落ち込む、不眠、集中力が低下するなど、さまざまな心身症状を引き起こすのです。
こうした状態が続くと、うつ病につながってしまうことが多くなります。
普段から寝つきが悪く、朝から気分がぐったりしている方は、寝ている間にココロの疲れが解消されていないことが多いですから、「古傷の痛み」の項目で紹介した生活習慣の改善を実践してみて下さい。
また、現時点でうつ病の初期症状が出ていると感じている方は、迷わず心療内科に行って診察してもらいましょう。
うつ病は、早いうちに治療を始めることが肝心です。
うつ病になると気象病の影響も受けやすくなり、なかには天気が悪くなるたびに、布団から起き上がれなくなる人もいるぐらいなんですよ。
認知機能の低下
「交感神経の暴走→自律神経の継続的な乱れ→不眠症状の発生」
天気痛がきっかけとなって、このように症状が悪化すると、認知機能の低下が心配になります。
(主な認知機能)
・言語機能
・記憶力、判断力
・五感を通じた状況把握力
・計画、実行力
ストレスや疲労がたまると、こうした認知機能が一時的に低下することがありますが、自律神経の乱れが続くと脳へのダメージが深刻になり、社会問題にもなっている認知症を引き超すことも。
認知症も、現代医学では治療ができない病気ですから、予防が何よりも大切です。
天気痛対策と、脳の機能を維持する目的として、自律神経を整える生活に改めるとともに、「質の高い睡眠」にこだわってください。
重要なのは、毎日7~8時間程度の睡眠時間をキープするだけでなく、深い睡眠を得るということです。
夜中に何度も目が覚めるという方は、浅い睡眠の割合が多くなっている可能性があります。
先にご説明した、交感神経を刺激する行動は控え、なるべくリラックスした状態で眠りにつくようにしましょう。
更年期障害
女性は閉経をむかえる時期にさしかかると、ホルモンバランス崩してさまざまな体調不良を発生しやすくなります。
カラダのほてり、急な発汗といった身体症状から、やる気や集中力の低下、落ち込みなど、うつ病を発症することも。
このツライ時期に追い打ちとなるのが、気象病の影響です。
ただでさえ、乱れがちな自律神経が正常にはたらかなくなって、日常生活に支障が出ることもしばしば。
この場合も、自律神経を整える生活を第一に考えつつ、病院の更年期外来で治療を受けることも検討してみましょう。
病院では状態に応じて、ホルモン補充療法や、抗うつ薬の処方、カウンセリングなどを行なって、症状緩和をサポートしてくれますよ。
まとめ
気圧や気温の急激な変化は、カラダはもちろんのこと、ココロにも大きなダメージを与えることがお分かりいただけたと思います。
気象病が引き起こす天気痛は、現時点では完治させる方法が見つかっていません。
でも、自律神経を整える生活習慣への改善は、心身に必ずプラスに作用しますから、今日からさっそく実践してみましょう。
最後に、佐藤医師が開発した、薬に頼らない天気痛対策をお伝えします。
それは、手首と腕の腱が交わる部分にある、“内関”というツボを押す療法。
ここを刺激することで心身がリラックスして、健康生活をサポートすることができるんです。
自分の手でツボを押してもいいのですが、内関の場所は体調によって変わるので捉えにくいという特徴があるため、「天気痛ブレス」というブレスレットを使うのがおススメです。
腕に巻くだけで、気分を常にリフレッシュさせてくれますよ。
天気痛ブレスの開発には、佐藤医師や針灸師も関わっていますから、安心感が非常に大きいですよ。
何よりも、薬のように副作用が発生する心配が少ないので、若い人からシニアの方にまで大人気。
血行をよくしたり、筋肉のコリをなくしたりといったことにもつながりますから、みなさんもぜひ使ってみてくださいね。

この記事を監修したドクター

佐藤 純 医師
医学博士 愛知医科大学医学部客員教授
経歴
医師・医学博士。名古屋大学教授を経て、愛知医科大学・学際的痛みセンターで、日本唯一の「天気痛外来」を開設。
天気痛研究・診療の第一人者としてNHK「ためしてガッテン」、日本テレビ「世界一受けたい授業」など「気象病」「天気痛」の専門医としてメディア出演多数。
著書に、『天気痛を治せば、頭痛、めまい、ストレスがなくなる!』(扶桑社)などがある。
経歴
医師・医学博士。名古屋大学教授を経て、愛知医科大学・学際的痛みセンターで、日本唯一の「天気痛外来」を開設。
天気痛研究・診療の第一人者としてNHK「ためしてガッテン」、日本テレビ「世界一受けたい授業」など「気象病」「天気痛」の専門医としてメディア出演多数。
著書に、『天気痛を治せば、頭痛、めまい、ストレスがなくなる!』(扶桑社)などがある。